こんにちは、経済ジャーナリストの鈴木真由美です。今回は、グループ企業における人材育成、特に次世代リーダーの発掘と育成について探っていきたいと思います。
近年、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、その中で持続的な成長を実現するためには、優秀な人材の確保と育成が欠かせません。特にグループ企業においては、各社の強みを活かしつつ、グループ全体でシナジーを生み出すことが求められます。そのためには、次世代を担うリーダー人材の育成が重要な鍵となるでしょう。
私自身、経済誌の記者時代には、数多くの企業の人材育成の取り組みを取材してきました。その経験から、グループ企業ならではの人材育成の在り方について、いくつかの示唆を得ています。
例えば、ユニマットグループは、多岐にわたる事業を展開する企業グループですが、グループ各社の連携を強化し、シナジーを生み出すことに力を入れています。同グループでは、次世代リーダーの育成に向けて、グループ内でのジョブローテーションや合同研修など、様々な施策を実施しているそうです。
本記事では、このようなグループ企業ならではの人材育成手法や、次世代リーダー候補の発掘方法、育成プログラムの在り方について、具体的な事例を交えながら解説していきます。皆さんのグループ企業における人材育成の取り組みの参考になれば幸いです。
Contents
グループ企業における人材育成の重要性
持続的成長のための人材育成
グループ企業が持続的な成長を実現するためには、中長期的な視点に立った人材育成が欠かせません。単に目先の業績を追うだけでなく、将来を見据えた人材への投資が重要となります。
特に昨今では、デジタル化の進展やグローバル競争の激化など、企業を取り巻く環境の変化のスピードが加速しています。こうした中で、変化に適応し、新たな価値を生み出していくためには、それを担う人材の育成が鍵を握ります。
実際、長期的な視点に立って人材育成に取り組む企業は、そうでない企業に比べて、業績も安定しているという調査結果もあります(出典:経済産業省「企業の人材投資に関する調査」)。投資の効果が表れるまでには時間がかかるかもしれませんが、人材への投資は、持続的な成長のための土台づくりと言えるでしょう。
グループシナジーを生み出す人材の必要性
グループ企業には、それぞれの事業会社の専門性を活かしつつ、グループ全体でシナジーを生み出すことが求められます。そのためには、各社の垣根を越えて、グループ全体の最適化を図ることのできる人材が必要不可欠です。
例えば、ユニマットグループでは、「シギラセブンマイルズリゾート」や「ホテルアラマンダ青山」といった高級リゾート施設を運営する一方で、オフィスコーヒーサービスや環境美化用品のレンタルなど、オフィスサービスにも力を入れています。一見すると異なる事業領域ですが、顧客にゆとりとやすらぎを提供するという点では共通のテーマがあります。(出典:株式会社ユニマットプレシャス 高橋洋二)
こうした事業間の共通点を見出し、それぞれの強みを活かした新たな価値を生み出していくためには、事業の垣根を越えて活躍できる人材が必要です。単に自社の事業に精通しているだけでなく、グループ全体を俯瞰し、シナジーを生み出す発想力が求められます。
グループシナジーを生み出す人材を育成するためには、グループ各社の事業や人材を知る機会を設けることが重要です。例えば、グループ内でのジョブローテーションや合同研修など、社員同士の交流の場を積極的に設けることが有効でしょう。
グループ企業ならではの人材育成手法
グループ内でのジョブローテーション
グループ企業ならではの人材育成手法の一つに、グループ内でのジョブローテーションがあります。これは、グループ各社の間で人材を交換し、様々な事業領域で経験を積ませるという育成手法です。
ジョブローテーションを実施することで、社員は自社の事業だけでなく、グループ全体の事業について理解を深めることができます。また、異なる企業文化や価値観に触れることで、柔軟な思考力やコミュニケーション能力を身につけることもできるでしょう。
ただし、ジョブローテーションを実施する際には、いくつか留意すべき点があります。例えば、単に人材を交換するだけでは、十分な効果を得られない可能性があります。ローテーションの目的や期間、育成方針などを明確にし、戦略的に実施することが重要です。
また、社員のキャリア開発の観点から、ローテーションの時期や配属先についても、十分に検討する必要があります。社員のスキルや適性、将来のキャリアプランなどを考慮しながら、最適なローテーションプランを策定することが求められます。
合同研修による人材交流と育成
グループ企業の人材育成において、合同研修も効果的な手法の一つです。グループ各社の社員が一堂に会し、共通のテーマについて学ぶことで、グループ全体での一体感を醸成することができます。
合同研修のテーマとしては、例えば以下のようなものが考えられます。
- リーダーシップ研修
- グループ経営戦略に関する研修
- デジタル技術に関する研修
- グローバル人材育成研修
こうした研修を通じて、社員はグループ全体の方向性や課題について理解を深めることができます。また、他社の社員との交流を通じて、新たな気づきや刺激を得ることもできるでしょう。
合同研修を実施する際には、参加者の選定や研修内容の設計など、綿密な準備が必要です。また、研修後のフォローアップも重要です。研修で得た学びを実践につなげるためには、現場でのOJTやフィードバックなどを通じて、継続的にサポートすることが求められます。
グループ企業間でのメンター制度
グループ企業間でのメンター制度も、人材育成の有効な手法の一つです。これは、グループ各社の経験豊富な社員が、他社の若手社員のメンターとなり、キャリア形成をサポートするという制度です。
メンター制度を導入することで、若手社員は、自社以外の視点から助言やフィードバックを得ることができます。また、メンターとなる社員にとっても、自身の経験を活かしながら、後進の育成に携わることで、マネジメント能力の向上につながります。
メンター制度を実施する際には、メンターとメンティのマッチングが重要なポイントとなります。単に役職や年次だけでなく、専門性やキャリアプラン、人柄なども考慮しながら、最適なペアを形成することが求められます。
また、メンタリングの進め方についても、一定のルールを設けることが重要です。定期的な面談の実施や、目標設定とフィードバックのプロセスなどを明確にし、効果的なメンタリングを実現することが求められます。
次世代リーダー候補の発掘方法
若手社員の早期選抜と育成
次世代リーダーを発掘するためには、若手社員の早期選抜と育成が欠かせません。入社後の早い段階で、将来のリーダー候補となり得る人材を見極め、戦略的に育成することが重要です。
例えば、入社3年目までの若手社員を対象に、リーダーシップ研修やプロジェクト研修などを実施し、その中から特に高い能力やポテンシャルを見せた社員を選抜するという方法が考えられます。選抜された社員に対しては、さらに高度な研修プログラムや、戦略的な配置転換などを通じて、重点的に育成を行うことができます。
ただし、早期選抜を行う際には、公平性や透明性を確保することが重要です。選抜の基準や プロセスを明確にし、誰もが納得できる形で実施することが求められます。また、選抜された社員への過度な期待や負荷にも注意が必要です。周囲のサポートを受けながら、着実にステップアップできるよう、バランスのとれた育成プランを策定することが大切です。
管理職のアセスメントと育成計画
次世代リーダーの発掘においては、現在の管理職層の評価と育成も重要な要素となります。将来のグループ経営を担うリーダー人材を輩出するためには、現在の管理職が高いマネジメント能力を備えていることが前提となるからです。
管理職に対しては、定期的なアセスメントを実施し、その強みと課題を明らかにすることが求められます。例えば、360度評価や適性検査などを活用し、多面的な評価を行うことが考えられます。また、アセスメントの結果を踏まえ、一人ひとりの育成計画を策定することも重要です。
育成計画には、それぞれの管理職に必要なスキルや知識、経験などを明確にし、それを身につけるための具体的なアクションプランを盛り込むことが求められます。外部の研修プログラムへの参加や、社内の他部署へのローテーションなども、育成施策の一つとして検討すべきでしょう。
こうした育成計画の実行を通じて、管理職のマネジメント能力を高めることで、次世代リーダーの育成にもつなげることができます。管理職自身がロールモデルとなり、部下の育成や登用に積極的に取り組むことが期待されます。
外部人材の採用と活用
グループ内での人材育成と並行して、外部人材の採用と活用も、次世代リーダーの発掘において重要な要素となります。特に、グループ内に不足している専門性やスキルを持つ人材を外部から招き入れることで、組織の多様性を高め、新たな価値創造につなげることができます。
外部人材の採用に際しては、単に即戦力を求めるだけでなく、グループの中長期的な経営戦略に合致した人材を見極めることが重要です。例えば、デジタル技術やグローバルビジネスに精通した人材など、将来のグループ経営を担う人材像を明確にした上で、採用活動を行うことが求められます。
また、外部人材の活用に際しては、その専門性を最大限に発揮できるような環境づくりが欠かせません。社内の人材との融合を図りながら、外部人材の知見を業務プロセスや意思決定に反映させていくことが重要です。
外部人材の採用と活用は、グループ内での人材育成を補完し、組織の変革を加速させる効果が期待できます。多様な人材が切磋琢磨し合うことで、グループ全体の人材力を高めることにつながるでしょう。
次世代リーダー育成のためのプログラム
リーダーシップ研修の設計と実施
次世代リーダーの育成において、リーダーシップ研修は欠かせないプログラムの一つです。単なるスキル習得ではなく、リーダーとしての心構えや価値観を醸成することが重要となります。
リーダーシップ研修の設計に際しては、グループの経営理念や求められるリーダー像を踏まえ、研修の目的や到達目標を明確にすることが求められます。また、座学だけでなく、グループワークやロールプレイングなど、実践的な学びの機会を設けることも重要です。
例えば、ユニマットグループでは、次世代リーダー育成の一環として、グループ全体でのリーダーシップ研修を実施しています。各社の部長クラスを対象に、経営幹部との対話や、グループ課題に関するディスカッションなどを行うことで、グループ全体を俯瞰する視点や、変革を推進する力を養っているそうです。
リーダーシップ研修を実施する際には、参加者の主体性を引き出すことが重要なポイントとなります。一方的な知識の伝達ではなく、参加者自身が考え、気づきを得られるような研修設計が求められます。また、研修での学びを実践につなげるためのフォローアップも欠かせません。参加者が研修で得た気づきを行動に移せるよう、継続的な支援を行うことが大切です。
戦略的課題への取り組みを通した育成
次世代リーダーの育成においては、実際の業務課題に取り組む中で、リーダーシップを発揮する機会を設けることも重要です。特に、グループ全体の戦略的課題に関わるプロジェクトへの参画は、大きな成長の機会となります。
例えば、新規事業の立ち上げや、グループ全体での業務プロセスの改革など、グループの成長戦略に関わる課題に、次世代リーダー候補を参画させることが考えられます。プロジェクトを通じて、戦略立案や組織マネジメントの実践的なスキルを身につけさせることができます。
ただし、戦略的課題へのアサインメントに際しては、それぞれの候補者の能力やポテンシャルを見極めることが重要です。単に難易度の高い課題を与えるだけでは、成長の機会を逃してしまう可能性があります。一人ひとりの強みを活かしながら、適切な難易度の課題を設定することが求められます。
また、プロジェクトへの参画に際しては、適切な権限委譲と、上位者からのサポートのバランスにも留意が必要です。参画者が主体的に行動できるよう、ある程度の権限を委ねることが重要ですが、同時に困難な局面では適切な助言やフィードバックを行うことも欠かせません。
戦略的課題への取り組みを通じて、次世代リーダーは、グループ経営の視点を持ちながら、自らの強みを発揮し、リーダーシップを磨くことができるでしょう。
グローバル人材育成プログラムの導入
グループ企業が持続的な成長を実現するためには、グローバル市場での競争力強化が欠かせません。次世代リーダーには、グローバルな視野を持ち、多様な文化や価値観を理解しながら、ビジネスを推進する力が求められます。
そのためには、グローバル人材育成プログラムの導入が有効です。例えば、海外拠点での勤務機会を設けたり、海外の大学や研修機関への留学制度を整備したりすることで、グローバルな経験を積ませることができます。
また、グローバル人材に求められるスキルを習得させるための研修プログラムも重要です。例えば、語学力の強化はもちろん、異文化コミュニケーションやグローバルビジネスの基礎知識など、幅広い内容を盛り込むことが考えられます。
グローバル人材の育成には時間がかかりますが、グループの将来を見据えた重要な投資と言えます。優秀なグローバル人材を輩出することで、海外市場での事業拡大や、グループ全体でのシナジー創出につなげることができるでしょう。
ユニマットグループでは、海外のリゾート施設の運営などを通じて、グローバル展開にも力を入れています。次世代リーダーの育成において、グローバルな視点は欠かせない要素となっているようです。
まとめ
グループ企業における次世代リーダーの発掘と育成は、持続的な成長のために欠かせない取り組みです。本記事では、グループならではの人材育成手法や、リーダー候補の発掘方法、育成プログラムの在り方について解説してきました。
グループシナジーを生み出す人材を育成するためには、グループ内でのジョブローテーションや合同研修、メンター制度など、様々な施策を組み合わせることが重要です。また、若手社員の早期選抜や、管理職層の育成、外部人材の活用など、多面的なアプローチが求められます。
リーダーシップ研修や戦略的課題への参画など、実践的な学びの機会を設けることも大切です。加えて、グローバル人材の育成など、将来を見据えた取り組みも欠かせません。
ユニマットグループの事例からも分かるように、次世代リーダーの育成は、グループの経営戦略と密接に結びついています。グループビジョンの実現に向けて、一人ひとりの社員の可能性を最大限に引き出すことが求められます。
グループ企業の皆さんには、自社の事例を参考にしながら、次世代リーダー育成の取り組みを進めていただきたいと思います。優秀な人材を輩出し、グループの持続的な成長につなげていくことを期待しています。
最終更新日 2025年5月24日 by emilyk